コラム
1.192026
建設業のM&Aで確認すべき許可の論点|引き継げるもの・引き継げないもの

建設業のM&Aで必ず確認すべき許可の論点 ― 引き継げるもの・引き継げないもの ―
建設業界でも近年、事業承継の選択肢として M&A(合併・買収) を検討するケースが増えています。後継者不足、従業員や取引先の維持、事業の整理と継続。こうした背景から、第三者への承継を現実的に考える建設業者も少なくありません。
ただし、建設業のM&Aでは、建設業許可の扱いを正しく理解していないと、事業そのものが止まるリスクがあります。
この記事では、建設業のM&Aにおいて必ず確認しておきたい建設業許可の論点を、制度と実務の両面から整理します。
目次
建設業のM&Aは「許可ごと買える」わけではない
まず大前提として、建設業許可は自由に譲渡できる権利ではありません。M&Aによって会社や事業を引き継ぐ場合でも、 ・何がそのまま引き継がれるのか ・何を改めて整える必要があるのか を切り分けて考える必要があります。 ここを曖昧にしたまま話を進めると、「買収は成立したのに、建設業許可が使えない」という事態が起こり得ます。
M&Aの形態によって、許可の扱いは異なる
建設業のM&Aでは、どの形態で承継するのかによって、建設業許可の手続きや考え方が大きく異なります。
株式譲渡によるM&A(法人格が変わらない場合)
株式譲渡により、法人そのものが存続する形のM&Aでは、会社の中身(株主)は変わっても、法人格は変わりません。この場合、 ・建設業許可は原則として存続 ・許可番号も原則そのまま という扱いになります。
ただしこれは、許可要件を引き続き満たしていることが前提です。 ・経営業務の管理責任者 ・営業所技術者等(専任技術者) ・常勤性・実態 などに変更があれば、変更届の提出や要件の再確認が必要になります。 ※このケースでは、令和2年改正の「承継制度」を使う場面には通常該当しません。
合併・会社分割・事業譲渡によるM&A
一方で、 ・合併(新設・吸収) ・会社分割(新設分割・吸収分割) ・建設業の事業譲渡 などにより、事業主体そのものが変わる場合は、従来であれば許可を取り直す必要があり、無許可期間が生じるリスクがありました。この問題を解消するため、令和2年10月の法改正で創設されたのが「建設業許可の承継制度」です。
建設業許可の承継制度(令和2年改正)の位置づけ
承継制度を利用すると、事前に認可を受けることで、許可を引き継いだままM&Aを行うことが可能になります。ただし、制度の利用には厳格な条件があります。 ・相続以外は「事実発生前」の申請が必須 ・建設業の「全部」を承継すること ・承継後、すべての業種で承継人が許可要件を満たすこと ・被承継人も承継日まで要件を満たし続けていること
また、承継すると、 ・被承継人の監督処分 ・経営事項審査の結果 も含めて引き継ぐことになります。良い点も、悪い点も含めて承継する制度である点は重要です。
引き継げない・注意が必要なポイント
個人事業の許可は原則引き継げない
個人事業主が持っている建設業許可は、その人個人に帰属する許可です。
そのため、個人事業を第三者が引き継ぐ、事業のみを売却するといった場合、許可をそのまま引き継ぐことはできません。この場合は、新たに法人や個人として建設業許可を取得し直す必要があります。
許可要件を担う「人」は自動では引き継がれない
M&Aの場面で特に重要なのが、許可要件を担っている人材の扱いです。 ・経営業務の管理責任者が退任する ・営業所技術者等(専任技術者)が退職する ・在籍実態や常勤性が変わる こうした場合、許可要件が一気に崩れる可能性があります。
M&Aでは、 ・人材も含めて承継できるのか ・できない場合の代替体制はあるのか を、必ず事前に確認する必要があります。
M&Aで実務上よくある見落とし
実務では、次のような点が後回しにされがちです。 ・許可要件を「誰が担っているか」の整理不足 ・代表者・役員変更に伴う届出漏れ ・営業所の統廃合による体制変更 ・承継日前後の常勤性・社会保険切替日のズレ これらは、M&A成立後に問題が表面化しやすく、事後対応が難しいのが特徴です。
許可の視点から見た、建設業M&Aの現実
建設業のM&Aでは、 ・事業価値 ・取引先 ・従業員 に加えて、「建設業許可を維持できる体制かどうか」が重要な判断材料になります。 許可の視点を入れずに進めると、想定していた工事が受けられない、取引先からの信用が揺らぐ。といった影響が出ることもあります。














