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コラム
11.272025
遺産分割協議書の署名ミスに気づかず提出してトラブルになった話

遺産分割協議書の署名ミスに気づかず提出してトラブルになった話
遺産分割協議書は、預貯金の解約や不動産の名義変更など、相続手続きの中心となる重要な書類です。
しかし実務では、「署名・押印のミスに気づかないまま提出してしまい、手続きが止まってしまう」というトラブルが少なくありません。今回は、行政書士として相談の多い“一般的なケース”をもとに、署名ミスがなぜ起きやすいのか、どんな問題につながるのかを分かりやすく整理します。
目次
署名ミスが起きた一般的なトラブル事例
実際にあった相談の中で、次のような署名ミスが原因で手続きが進まなくなったケースがあります。
・印鑑が印鑑証明書と一致していない
・本人が書いた署名と筆跡が大きく異なる
・ページごとの割印(契印)が抜けている
・日付の書き間違えや訂正方法の不備
・家族による“代理署名”が疑われる
金融機関は署名の確認が非常に厳しく、少しでも不自然さがあると「本人の意思に基づく署名か確認できない」として受理されないことがあります。
結果として、
・書類全体の再作成
・全相続人に再署名を依頼
・手続きの大幅な遅れ
・一部相続人からの不信感につながる
といった問題が発生します。
なぜ署名ミスが大きなトラブルになるのか
遺産分割協議書は、相続人全員の意思を示す「契約書」として扱われるため、提出先の金融機関・保険会社・各種窓口は以下の点を厳重に確認します。
・現住所・現氏名と一致しているか
・本人が自署しているか(代筆は不可)
・押印が本人の印鑑か
・筆跡が一致しているか
・書類全体の整合性が取れているか
金融機関によっては、軽微な誤字でも 「訂正印では認められない」 と判断される場合もあり、結果として 協議書そのものを再署名・再作成 しなければならないケースが多くあります。
署名ミスが起きやすいポイント
署名のミスは、次のような“小さな誤り”から発生することが多いです。
● 印鑑の使い分けを誤る
銀行印・認印・昔使っていた印鑑などが混在し、本人の意図しない印鑑を押してしまうケースは頻繁にあります。
● 家族による“代理署名”が混ざる
高齢の親が書きづらい場合、家族がつい代筆してしまうケースが多く、金融機関で止まる典型例です。
● ページ間の割印(契印)を忘れる
複数ページの協議書では、割印がないと 書類の同一性が証明できず受理不可 となることがあります。
● 日付ミス・訂正方法の間違い
・西暦/和暦の混在、ずれ
・日付の誤記
・訂正印の押し忘れ
・正しい訂正方法になっていない
これらは訂正扱いにならず再作成となることがあります。
● 筆跡があまりにも異なり“本人疑義”と判断される
名前が読めない、以前の署名と極端に違うなど、“本人署名かどうか”の判断に時間がかかるケースがあります。
訂正では済まない場合がある理由
提出先によっては、次の理由から訂正を認めず「再作成」を求めることがあります。
・相続書類は法的効果が大きい
・他者の代筆の可能性を排除できない
・本人意思の確認が最優先
・金融機関の内部規程が厳格
特に金融機関・保険会社の相続センター方式は「署名不備=原則再提出」 のケースが非常に多いです。
署名ミスに気づいたときの一般的な対処方法どの部分が不備か正確に把握する
1.提出先の判断を確認し、協議書の再作成が必要か判断する
2.相続人全員に事情を説明し、再署名を依頼
3.署名方法・印鑑を統一し、再発を防ぐ
4.本人確認書類と照合しながら署名する
相続人が多いと、郵送の往復だけで数週間かかることもあります。
トラブルを避けるための実務的チェックポイント
相続書類の署名時は、次の点を必ず確認する必要があります。
・署名が本人の自書であること
・使用する印鑑を統一する
・ページ間の割印を忘れない
・日付を正確に記入する
・訂正時は所定の訂正方法を守る
・本人確認書類と表記を揃えておく
些細なミスが大きな手続き遅延につながるため、「確認に時間をかける」=最も確実なトラブル予防策 です。
まとめ
遺産分割協議書の署名ミスは、手続きそのものを止めてしまう大きな原因 になります。
特に多いのは、
印鑑の使い間違い
家族の代理署名
割印(契印)忘れ
日付誤記
訂正方法の不備
など、一見ささいに思えるポイントです。相続手続きは「本人の意思」と「書類の整合性」が最も重視されるため、
署名の段階で丁寧に確認することが、トラブル防止につながります。
関連リンク
・遺産分割協議書とは
・銀行口座の相続手続きとは
・相続人調査を怠った結果、後から別の相続人が現れて争いに
・遺言と異なる遺産分割を希望する場合の実務上の注意点














