コラム
12.112025
業種追加申請で専任技術者の要件を満たせなかった事例|許可業種を増やす壁とは

建設業許可の業種追加申請を進めようとしたとき、最大の壁になるのが営業所技術者等(専任技術者)の要件です。結論からいうと、追加したい業種に対応できる営業所技術者等(専任技術者)を確保できるかどうかが、申請の可否をほぼ決定します。
「元請から業種追加を求められた」「下請の依頼が来たが該当業種の許可がない」——こうした場面で急いで申請しようとして、営業所技術者等(専任技術者)の要件が満たせないと分かって断念するケースが、栃木県内でも実際に起きています。この記事では、その壁の実態と、現実的な対応策を解説します。
目次
建設業許可の業種追加とは
建設業許可には29種類の業種があり、請け負う工事の種類に応じた許可が必要です。すでに何らかの許可を持っていても、許可を受けていない業種の工事を元請として受注することは建設業法上できません。
たとえば、大工工事業の許可しか持っていない業者が、内装仕上工事を元請として請け負おうとすれば、内装仕上工事業の許可を別途取得しなければなりません。これを既存の許可に業種を追加する手続きが「業種追加申請」です。
申請自体は新規取得と同様の審査を受けます。経営業務管理責任者・営業所技術者等(専任技術者)・財産的基礎などの要件が改めて確認されます。この中で、実務上最もつまずきやすいのが営業所技術者等(専任技術者)の要件です。
よくあるきっかけ|業種追加が必要になる場面
業種追加の相談が生じる場面はいくつかのパターンに分かれます。
最も多いのは「元請から許可業種の追加を求められた」というケースです。大手ゼネコンや地場の工務店から「この業種の許可があれば仕事を出せる」と言われ、急いで申請しようとします。
次に多いのは「長年やってきた工事が実は無許可業種だったと気づいた」ケースです。自社の業務範囲を改めて確認したときに、許可を受けていない業種の工事を請け負っていたことに気づく、というパターンです。
また、事業多角化の流れで新しい分野に参入したいとき、あるいは下請として受けてきた工事を今後は元請として受注したいというタイミングでも業種追加の検討が始まります。
いずれの場面でも、営業所技術者等(専任技術者)とは何かを事前に正確に理解しておくことが、その後の判断に大きく影響します。
営業所技術者等(専任技術者)の要件が壁になるパターン
業種追加の申請には、追加したい業種に対応する営業所技術者等(専任技術者)が必要です。営業所技術者等(専任技術者)として認められるには、次のいずれかを満たす必要があります。
国家資格による証明:対象業種に対応した国家資格を保有していること。施工管理技士・建築士・電気工事士など、業種ごとに認められる資格が決まっています。
学歴と実務経験の組み合わせによる証明:指定学科を卒業していれば、3年または5年の実務経験で証明できます。
実務経験10年による証明:学歴・資格がなくても、その業種に関する工事の実務経験が10年以上あれば認められます。
この中で最もハードルが高いのが「実務経験10年」の証明です。「10年以上やってきた」という事実があっても、それを書類で証明できなければ認められません。ここで多くの申請が行き詰まります。
実務経験証明書の落とし穴
実務経験10年を証明しようとして、書類の準備段階で頓挫するケースは非常に多いです。
証明に必要なのは、工事件名・工事場所・工事金額・工事期間・発注者情報などが記載された書類です。具体的には工事請負契約書・注文書・請求書・入金確認書類などが用いられます。
問題になるのは10年前の書類が残っていないことです。「10年以上前の請求書は捨てた」「口頭で受けた仕事が多かった」という状況では、実務経験を書類で立証することができません。
記録があっても、1件あたりの工事期間が短すぎる・証明したい業種の工事として認められる内容かどうか疑義が生じる・複数業種の工事が混在していて区別できないといった問題が出ることもあります。
さらに難しいのが、証明者(かつての雇用主や発注者)の協力が得られないケースです。廃業・倒産していてハンコをもらえない、連絡が取れない、といった状況では証明自体が不可能になります。
資格取得で解決できるケース・できないケース
「それなら資格を取ればいい」という話になりますが、現実はそう簡単ではありません。
資格取得で解決できるケースは、受験資格を満たしており、試験に合格するまでの時間的余裕がある場合です。2級施工管理技士などは比較的取得しやすく、業種追加の突破口になることがあります。会社として資格取得を支援し、技術者のスキルアップと業種追加を同時に進める方針もあります。
一方で資格取得で解決できないケースもあります。受験資格に実務経験が必要な資格では、その実務経験の証明がまた問題になります。「今すぐ業種追加しないと受注機会を失う」という時間的制約がある場合、資格取得を待っている余裕がないこともあります。
中途採用で有資格者を確保する方法もありますが、営業所技術者等(専任技術者)は常勤でその営業所に専属していることが条件のため、採用後すぐに申請できるわけでもなく、社会保険や雇用実態の整備が必要です。
業種追加を断念した場合の代替策
営業所技術者等(専任技術者)の要件が満たせないと分かったとき、現実的な選択肢はいくつかあります。
工事を断る判断も重要な選択です。無許可で請け負うことは建設業法違反であり、罰則・信用失墜・最悪の場合は許可取消にもつながります。短期的な受注機会を失っても、コンプライアンスを守ることが長期的な事業継続につながります。
許可を持つ業者に下請として依頼する方法もあります。自社が元請として受注し、対象業種の工事を許可業者に発注する形です。ただし一括下請負にならないよう、自社が管理責任を果たすことが前提条件です。
将来の業種追加に向けた準備を今から始めることもできます。今後の工事記録を丁寧に残す・資格取得計画を立てる・有資格者の採用を計画する、といった取り組みを継続すれば、数年後には申請できる状態になります。
事前準備が申請の成否を決める
業種追加を将来的に考えているなら、早めの準備が有利に働きます。
今から工事記録を丁寧に保管することが最初の一歩です。契約書・注文書・請求書を、日付・金額・工事内容が分かる形で整理して保存しておくと、将来の実務経験証明に使えます。「いつか必要になるかもしれない」という意識を持って記録を残すかどうかで、数年後の申請可能性が大きく変わります。
自社の技術者がどんな資格を持っているかを把握し、追加取得できる資格を確認しておくことも有効です。会社として資格取得支援制度を整えると、人材の定着と業種追加の両方に効果があります。
業種追加を検討し始めた段階で専門家に相談することで、「申請できる状態になるまでに何が必要か」を早めに把握できます。建設業許可FAQ完全ガイドも参考にしながら、全体像を理解した上で動くことをおすすめします。
まとめ|要件を満たせるかを先に確認してから動く
業種追加申請で最もよくある失敗は、「おそらく申請できるだろう」と思って動き始め、書類収集の段階で行き詰まることです。特に実務経験10年の証明は、記録が残っていなければ後から取り返しがつきません。
営業所技術者等(専任技術者)の要件が満たせるかどうかは、申請を本格的に進める前に必ず確認してください。
行政書士かなでオフィスでは、業種追加申請のご相談から書類準備・申請代行まで対応しています。「自社で営業所技術者等(専任技術者)の要件を満たせるか判断してほしい」「どの資格があれば申請できるか教えてほしい」というご相談も歓迎します。宇都宮市・栃木県全域のお客様からのご連絡をお待ちしています。













