コラム
1.152026
建設業許可なしで500万円超の工事を受注してしまった場合のリスクと対策|宇都宮市の実務事例

建設業許可なしで500万円以上の工事を受注してしまった場合、「知らなかった」では済みません。結論をはっきりいうと、建設業法違反として3年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象になり得ます。さらに許可取得まで同様の工事を受注できなくなるため、事業継続に深刻な影響が出ます。
宇都宮市内でも「気づかないうちに許可が必要な金額の工事を受けてしまっていた」というご相談が寄せられます。この記事では、どういうケースで違反になるのか、発覚した場合にどう対処するのか、そして今すぐ許可を取るべき理由を実務の観点から解説します。
目次
建設業許可が必要な工事の範囲
まず基本を整理しておきます。建設業許可が必要になるのは、次の規模を超える工事を請け負う場合です。
- 建築一式工事以外:工事1件の請負金額が500万円以上
- 建築一式工事:工事1件の請負金額が1,500万円以上(または延べ面積150平方メートル以上の木造住宅工事)
この基準を下回る工事は「軽微な建設工事」として、許可なしに請け負うことができます。
ただし、この「500万円」という数字には材料費・労務費・諸経費をすべて含んだ「請負金額の合計」が基準になります。材料を施主が用意しても、その材料の市場価格相当額を含めて判断するケースがある点に注意が必要です。
建設業許可とは何かという基礎から確認したい方は別記事をご覧ください。
「知らなかった」では済まないリスク
建設業法は、許可なしに許可が必要な規模の工事を請け負うことを明確に禁止しています(建設業法第3条)。違反した場合の罰則は次のとおりです。
- 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人の場合は両罰規定で法人にも罰金)
「担当者が知らなかった」「元請けに言われるままに受けた」といった事情は、刑事責任の免責理由にはなりません。建設業法は業として工事を請け負う事業者に対して適用されるため、「うちは小さな会社だから」という言い訳も通りません。
また、行政処分として建設業許可の申請に影響が出ることもあります。違反歴がある場合、許可申請の審査において欠格要件に該当する可能性があります(建設業法第8条)。
よくある誤解|これで大丈夫と思っていたら違反になるケース
実務上よく見られる誤解を整理します。
「工事を分割すれば500万円を下回る」という誤解
一つの工事を複数の契約に分けて、それぞれ500万円未満に収めようとするケースがあります。しかし、建設業法はこれを想定しており、「正当な理由なく分割した場合は合算して判断する」とされています。意図的な分割は違反になります。
「材料費は含まない」という誤解
施主(発注者)が材料を手配・支給するケースで、「工賃だけで計算すれば500万円未満」と判断してしまうことがあります。しかし、支給材料がある場合もその材料の市場価格を加えて請負金額を計算することが原則です。
「下請けとして入るから関係ない」という誤解
元請けが許可を持っていても、下請けとして施工する業者が500万円以上の工事を請け負う場合は、下請け業者にも許可が必要です。元請けの許可が自社に適用されるわけではありません。
発覚するケース|いつ・どこから問題になるか
許可なしの無許可営業は、次のような場面で発覚することが多いです。
元請け業者からの指摘は最も多い発覚ルートです。大手ゼネコンや公共工事を扱う元請けでは、下請け業者の許可状況を確認する義務があります。許可証の提出を求められた段階で初めて「持っていなかった」と気づくケースがあります。
行政による立入調査・抜き打ち確認も定期的に行われています。栃木県では建設業課が無許可営業の調査を実施しており、現場や事務所への立入調査が行われることがあります。
発注者(施主・公共機関)からの問い合わせで発覚することもあります。公共工事の入札参加資格審査や、民間でも大型プロジェクトでは下請け業者の許可状況が確認されます。
発覚後の対処|やるべきこととやってはいけないこと
無許可営業が発覚した、またはその疑いが生じた場合の対処を整理します。
まず、進行中の工事については、行政の指導に従うことが前提です。無許可状態での工事続行は違反状態の継続になります。状況によっては工事の中断・契約の見直しが必要になることもあります。
次に、できる限り早く許可申請の準備を始めることです。許可が下りるまでの間は同様の規模の工事を受注できないため、事業への影響を最小化するためにも速やかな申請が重要です。
やってはいけないことは、発覚を恐れて事実を隠蔽したり、書類を偽造したりすることです。発覚後の対応が悪質と判断されると、処分が重くなります。
また、無許可で受けてしまった工事の元請け・発注者への説明を早めに行うことも必要です。事後的な報告でも、誠実な対応が信頼関係を保つ上で重要です。
建設業許可FAQ完全ガイドでは、無許可・軽微な工事の範囲に関するよくある疑問もまとめています。
今すぐ許可を取るべき理由
「いずれ取らなければ」と思いつつ、許可申請を後回しにしている事業者は少なくありません。しかし許可取得を急ぐべき理由は複数あります。
受注できる工事の規模が広がるだけでなく、元請けや発注者からの信頼度が大きく変わります。栃木県内でも公共工事の入札参加には建設業許可が前提となるケースがほとんどです。
また、許可申請には経営業務管理責任者や営業所技術者等(専任技術者)の要件を満たすことが必要で、準備には一定の時間がかかります。要件を満たせる状態になったタイミングで申請を進めないと、さらに時間を無駄にします。
経営業務管理責任者の要件については別記事で詳しく解説していますので、自社が要件を満たしているか確認してみてください。
許可申請の流れと準備期間の目安
建設業許可の新規申請にかかる時間は、準備状況によりますが概ね次のような流れになります。
まず書類の準備期間として、要件の確認・必要書類の収集に2〜4週間程度かかります。過去の工事経歴や役員の経歴書類が揃っているかによって前後します。
次に申請書類の作成・提出で1〜2週間、その後行政による審査期間として栃木県の場合は約30〜45日(標準処理期間)がかかります。
つまり申請から許可取得まで最短で約2ヶ月程度かかります。急いで動き始めても、それだけの時間が必要です。「今から動けば何とかなる」という状況も、早く動き始めるほど余裕が生まれます。
まとめ|無許可のリスクは想像以上に大きい
建設業許可なしで500万円超の工事を受注してしまうリスクは、罰則だけにとどまりません。工事の中断、取引先との関係悪化、許可取得までの受注停止——これらが重なると、事業の存続そのものに影響が出ます。
「うちはまだ許可を取っていないが、大丈夫なのだろうか」という不安がある方は、早めに現状を専門家に確認してもらうことをおすすめします。













