コラム

自筆証書遺言のこれから|制度の今後とデジタル化の可能性を行政書士が解説

こんにちは。栃木県宇都宮市のKanade行政書士事務所です。前回の記事では、公正証書遺言のデジタル化についてご紹介しました。今回は、その続編として「自筆証書遺言」の今後について考えてみたいと思います。

最近では、公正証書遺言がオンラインで作成できるようになる制度が整いつつあり、遺言のあり方そのものが見直されつつあります。こうした流れの中で、自筆証書遺言は今後どうなっていくのか。制度の現状と今後の展望を、行政書士の視点から解説します。

自筆証書遺言の現行制度と保管制度の仕組み

自筆証書遺言とは?作成要件と注意点

自筆証書遺言とは、全文・日付・氏名を自筆で書き、押印することで成立する遺言のことです。これは、遺言者の真意に基づく内容であることを確保し、偽造・変造を防止する目的があります。

作成は手軽ですが、不備があると無効になるリスクがあります。たとえば、日付の記載が曖昧だったり、署名が抜けていたりするケースでは、せっかくの遺言が効力を持たないことがあります。

法務局の保管制度|制度上のメリットと活用のポイント

2020年からスタートした「遺言書保管制度」により、自筆証書遺言を法務局に保管することが可能になりました。これにより、遺言書の紛失や改ざんのリスクが減り、さらに保管された遺言については家庭裁判所での検認が不要になるというメリットがあります。

制度を正しく利用すれば、自筆証書遺言の確実性を高める有効な手段となります。


自筆証書遺言の課題と今後の制度的展望

デジタル対応は進むのか?

法務省民事局の令和6年1月の資料によると、現行の自筆証書遺言制度について、以下のような見直しが検討されています:

  • ワープロ入力や録音・録画などを活用しつつ、遺言者の真意をどう担保するか
  • 押印の必要性や、自書を要しない範囲の拡大の是非
  • 電子署名やデジタル保管の導入による、改変防止や本人確認の強化
  • デジタル完結を前提とした法務局での保管体制の構築

これらの議論は、公正証書遺言のデジタル化と同様に、「誰もが確実に遺言を残せる社会」の実現を目指す動きの一環といえます。

高齢者や障がい者にとっての使いやすさの課題

手書きが難しい方にとって、自筆証書遺言は現実的な選択肢とは言いにくい状況です。補助者の関与や録音・代筆などが法的にどこまで認められるかが今後の課題です。制度の柔軟化と技術支援の導入が期待されます。


行政書士の視点から見る「これからの自筆証書遺言」

実際の相談で見える現実とニーズ

自筆証書遺言についてのご相談では、「書いたけれど誰にも見せていない」「保管場所が不安」といった声をよく聞きます。せっかく作成しても、家族がその存在を知らず、遺言の効力を発揮できないケースもあります。

デジタル化される社会で「手書き」が担う役割

一方で、「手書きの遺言だからこそ伝わる気持ち」もあります。手書きだからこそ、本人の筆跡や表現に重みを感じるという方も少なくありません。制度が変化していく中でも、こうした想いをどう活かしていくかが問われています。


まとめ|制度に頼るだけでなく「備える」ためにできること

公正証書遺言がオンライン化される中でも、自筆証書遺言には手軽さや私的な想いを伝えやすいという特長があります。今後制度がどう変わっていくとしても、大切なのは「備えておく」ことです。

法務省でも自筆証書遺言制度の見直しが進められており、新しい制度や仕組みが導入される可能性もあります。いまのうちから、どの形式で遺言を残すのが適しているのか、一緒に考えてみませんか?

遺言書の作成に迷ったときは、形式にこだわる前にまずは専門家に相談してみてください。行政書士は、法的要件の確認や書き方のサポート、保管方法の提案まで幅広く対応しています。


Kanade行政書士事務所では、遺言書についてご相談を承っています。遺言書の作成を検討している方、あるいは将来的な準備を始めたい方は、どうぞお気軽にご連絡ください。

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✅ 公正証書遺言ページへのご案内

オンラインで作成できるようになる「公正証書遺言」の最新制度についても詳しくまとめています。

公正証書遺言のデジタル化についてはこちらをご覧ください。

【参考サイト】
法務省】法制審議会第199回会議配布資料「遺言制度の見直しについて」
民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」改正の概要
公正証書に係る一連の手続のデジタル化の概要
民法(遺言関係)部会参考資料「デジタル技術を活用した遺言制度の在り方に関する研究会報告書」(令和6年3月
【関連トピックス】
自筆証書遺言書保管制度(法務省)

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