コラム

「標準請負契約約款」とは?建設業者が知っておきたい契約書の基本

「標準請負契約約款」とは?建設業者が知っておきたい契約書の基本

建設業の契約トラブルを防ぐ「約款」とは

工事を請け負う際に交わす「契約書」。
その中でも特に重要なのが、「標準請負契約約款(ひょうじゅんうけおいけいやっかん)」です。

約款とは、工事の発注者と受注者の間で、あらかじめ定められた契約の基本ルールを指します。
たとえば「工期が遅れた場合の対応」「追加工事の扱い」「代金の支払時期」など、トラブルになりやすい部分を事前に取り決めておく仕組みです。

この「標準請負契約約款」は、国土交通省が定めた全国共通のひな形で、建設業界で信頼性の高い契約書として広く使われています。


標準請負契約約款の目的と特徴

標準請負契約約款の目的は、
「発注者と受注者の権利・義務のバランスを保ち、公正で円滑な契約関係を築くこと」にあります。

多くの建設業者が採用している理由は、以下の3点です。

  1. 契約トラブルを防ぐ共通ルールが整備されている
     → 工期変更・追加工事・中途解除など、実務で起こりやすい事例を網羅。

  2. 法令改正にも対応している
     → 民法改正(令和2年)などの変更点を反映し、最新の法的基準に沿っています。

  3. 公共工事にも通用する内容
     → 国や地方自治体が採用する契約基準と整合性があり、安心して使用可能です。


標準請負契約約款の基本構成

標準請負契約約款は、大きく次の3部構成になっています。

  1. 総則(契約の基本方針)
     契約の成立・履行・変更・解除など、基本的なルールを定めています。

  2. 請負代金(支払いに関する規定)
     出来高払い、検査合格後の支払時期、追加工事の取扱いなどを規定。

  3. 工事施工(現場運営に関する規定)
     設計変更、天候や災害による工期延長、安全管理の義務などを明記。

このように、工事前から完了までの全過程を通じたルールが整理されているのが特徴です。


建設業者が押さえておくべきチェックポイント

実際に契約を締結する際は、約款の全体を読み込むのは難しいかもしれません。
しかし、最低限次の3点を確認しておくことが大切です。

1. 追加工事・変更工事の扱い

口頭での依頼だけで工事を進めてしまうと、後から代金トラブルになることがあります。
標準約款では、「書面または発注者の確認を経て行う」ことが原則とされています。

2. 瑕疵担保責任(施工後の不具合)

完成後に不具合が見つかった場合の補修義務や期間も明記されています。
契約前に範囲を確認し、保証期間を曖昧にしないことが大切です。

3. 契約解除と損害賠償

発注者・受注者どちらの都合でも解除が可能な場合があります。
解除事由や違約金の規定を事前に確認しておくと、後のトラブルを防げます。


標準約款を使うメリットと導入のすすめ

標準請負契約約款を採用することで、次のようなメリットがあります。

  • 契約内容の明確化により、トラブルリスクを軽減できる

  • 法令改正や社会情勢に合わせて最新化される

  • 行政や元請との信頼性を高めることができる

特に中小建設業者にとっては、独自の契約書を作成するよりも、標準約款をベースにしたほうがリスクを減らしやすいと言えます。

自社仕様のひな形を整える場合も、まずは標準約款を参考にするとよいでしょう。


まとめ:契約の「型」を知ることが信頼の第一歩

工事契約は、書面を交わした時点から責任が発生します。
そのため、内容を理解せずに署名押印してしまうと、後から不利になるケースも少なくありません。

標準請負契約約款は、建設業界の「共通言語」として位置づけられる重要な文書です。
一度目を通しておくことで、取引先との信頼関係を築くうえでも大きな助けとなります。


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