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相続手続きで「養子縁組」が見落とされて遺産分割協議が無効になった例|相続人確認の重要性を知る

相続手続きで「養子縁組」が見落とされて遺産分割協議が無効になった例|相続人確認の重要性を知る

相続手続きでは、相続人を正しく確定できているかどうか が、後の手続きのすべての前提になります。しかし、実務の現場では、「養子縁組の存在が知られていなかったために、成立したと思っていた遺産分割協議が“無効”になった」というケースがまれにあります。この記事では、制度を理解し、同じトラブルを防ぐために知っておきたいポイントをまとめます。


1. なぜ養子縁組が見落とされるのか?

① 養子縁組が昔の本籍地で届出されている場合
本籍地が何度も変わっていると、古い戸籍の中にのみ「養子縁組の記載」が残っていることがあります。
よくある例
・戸籍の一部のみ取得してしまった
・改製原戸籍(紙戸籍)を取得していない
・結婚・転籍のたびに戸籍が新しくなり、過去の内容が追えない


② 親族が養子縁組の事実を知らない場合
養子縁組は「家族全員が必ず知っている事実」とは限りません。
・幼少期に養子縁組
・親族間の養子
・実子と同様に育てられ、公に語られなかった
といった状況で、家族が認識していないこともあります。


③ 入籍・結婚により姓が変わり、気付かれにくい
養子縁組後に結婚などで姓名が変更された場合、名前だけでは判断できず、見落とされる可能性があります。


2. 養子縁組を見落とすと何が起きるのか?

① 遺産分割協議が“無効”になる
相続人が一人でも漏れている状態で協議をすると、その遺産分割協議は 法的に無効 です。成立しているように見えても、
・銀行解約
・不動産の名義変更
などが後に戻される可能性があります。


② 再度の協議が必要になる(全員参加)
見落としていた養子も含めて、改めて遺産分割協議を行う必要があります。場合によっては
・再署名
・再押印
・不動産の登記のやり直し
が必要となり、時間・費用・労力が大きく増えてしまいます。


③ 相続人間の関係が悪化するケースもある
「知らなかった」「なぜ教えてくれなかったのか」といった感情面の行き違いが発生することも少なくありません。


3. 養子縁組の見落としを防ぐための“戸籍収集の基本”

① 被相続人の戸籍は「出生から死亡まで」
この範囲を取得することで、
・養子縁組
・認知
・離婚・婚姻
などのすべてを確認できます。


② 転籍歴が多い場合は、古い戸籍も必ず取得する
・改製原戸籍
・除籍
・戸籍の附票
などは必須。過去の記載を追わないと、養子縁組は確認できません。


③ 養子側(推定される人物)の戸籍が必要になることもある
・結婚で姓が変わった場合
・分家した場合など、別の戸籍で確認することもあります。


4. 養子縁組の見落としで実際に起きた典型例

【ケース】長男・長女だけが相続人と思っていたが、実は過去に養子が1名いた。(現在は音信不通だった)

状況
・被相続人:父
・相続人と思われていた:長男・長女
・見落とされていた事実:
 父が若いころに「親族の子を養子として迎えていた」

発生した問題

  1. 養子(Aさん)が戸籍に記載されており、法定相続人だった
  2. 養子を抜いたまま遺産分割協議書を作成
  3. 養子Aさんから「協議に参加していないため無効」と指摘
  4. 不動産登記や銀行手続きがやり直しに
  5. 全員で再度協議することに
    ※このように、「知らなかった」だけでは済まない結果になることがあります。

5. 相続手続きでは“相続人の確定”が最重要

遺産分割協議や手続きを進める前に、
・戸籍の漏れがないか
・養子縁組の記録がないか
・認知・婚姻・離婚歴が反映されているか
を確認することが、トラブルを防ぐ最大のポイントです。


6. まとめ|養子縁組の見落としは珍しくない。だからこそ、最初の確認が重要

相続人の確定は、すべての相続手続きの出発点です。
養子縁組は
・古い戸籍にしか記載がない
・家族に知られていない
・名前が変わっている
など、見落とされやすい要素があります。
遺産分割協議のトラブルを避けるためにも、出生から死亡までの戸籍収集 と、転籍歴の丁寧な確認 が欠かせません。この記事が、同じようなつまずきを防ぐための参考になれば幸いです。


Kanade行政書士事務所では、宇都宮市を中心に、栃木県全域に対応しています。

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