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コラム
11.182025
建設業の事業承継をスムーズに進めるには|栃木県の経営者が押さえる名義変更(許可の承継)のポイント

事業承継や会社組織の再編は、建設業において珍しいことではありません。しかし、「会社の名義を変えたい」「個人事業から法人に切り替えたい」といった場面で、建設業許可の名義をどう扱うかを正しく理解していないと、思わぬトラブルにつながります。
栃木県では「建設業許可の承継制度」が整備されており、事前に認可を受けることで許可を引き継ぐことが可能です。この記事では、栃木県の最新手引きをもとに、建設業許可の名義変更(承継)をスムーズに進めるための実務ポイントをわかりやすく解説します。
目次
1.栃木県における「許可の承継制度」とは?
従来は、会社の合併・分割・事業譲渡・法人成りなどを行った場合、新しい許可を取り直すしかありませんでした。そのため、許可が出るまで“無許可期間”が発生し、契約や工事に支障が出ることも。
そうした問題を解消するため、令和2年10月の法改正で「許可の承継制度」が創設されました。事前に認可を受けることで、許可を引き継いだまま事業承継ができます。
承継すると、許可だけでなく以下も引き継ぎます。
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被承継人の監督処分
-
経営事項審査の結果
「良い点も悪い点も丸ごと引き継ぐ」という仕組みになっています。
2.承継制度の4つの区分(栃木県の手引より)
栃木県の制度は以下の4区分に分かれています。
● ① 事業譲渡(法人成りも含む)
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個人 → 法人
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法人 → 個人
-
法人 → 法人
建設業の事業の“全部”を譲渡する場合。
● ② 合併(新設・吸収)
複数法人の合併で、建設業の許可を持つ会社が消滅する場合。
● ③ 会社分割(新設分割・吸収分割)
建設業部門を引き継ぐ新会社をつくる、または分割する場合。
● ④ 個人事業の相続
個人事業主が死亡した後に相続人が承継する場合。
※相続のみ“死亡後30日以内”に申請すれば遡及的に許可を継続できます。
3.承継後の許可期間・許可番号はどうなる?
● 許可の有効期間
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相続以外の承継:承継日の翌日から5年間(承継日当日も有効)
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相続:被相続人の死亡日から5年間
● 許可番号
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基本は 被承継人(元会社)の許可番号を継続使用
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例外として、承継元・承継先の双方が栃木県知事許可の場合、どちらかを選択可能
4.認可申請できるのはどのケース?(栃木県の要件)
次の条件を満たしていないと栃木県に申請できません。
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被承継人・承継人のすべてが栃木県知事許可業者
または -
営業所が栃木県内のみにある場合
※どちらか一方でも「大臣許可」の場合は、地方整備局(国土交通省)に申請。
5.承継制度を利用するための“必須要件”
承継を認可してもらうには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
(1)事実発生前に申請する(相続以外)
合併・分割・事業譲渡の前に認可が必要。事後申請は一切不可。
(2)建設業の“全部”を承継すること
一部だけ承継は不可。不要な業種がある場合は 事前に廃業届 が必要。
(3)区分が異なる許可はそのまま承継できない
例:被承継人=一般、と承継人=特定など
→どちらかを事前に廃業する必要あり。
(4)承継後すべての業種で承継人が許可要件を満たすこと
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経営業務管理責任者
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専任技術者(営業所技術者等)
-
財産的基礎
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誠実性
など、通常の許可要件をすべて満たすこと。
さらに、被承継人も承継日まで要件を満たし続けていることが必要。
6.実務で特に注意すべきポイント(現場で多いトラブル)
● ① 経管・専技の“常勤性”の確保
法人成りなどで同じ人が両方に在籍する場合
→承継日前の二重勤務扱いになるとNG
→承継先の許可が取消になる恐れあり
社会保険・住民税の切替日は必ず「承継日と同日」に。
● ② 必要書類の“後日提出分”の期限管理
承継後に提出できる書類もあるが、期限を過ぎると認可取消の可能性あり。
(例:常勤性確認書類、健康保険加入状況、営業の沿革など)
● ③ 合併・事業譲渡契約書の記載内容
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承継予定日(または認可日付)
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取得価格
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譲渡資産
-
従業員の取り扱い
などを必ず明記。
不備があると補正が長引き、承継日に間に合わないことも。
● ④ 事前相談は“2か月以上前”が推奨
栃木県監理課では 承継予定日の2か月以上前の事前相談 を推奨。
当日持参での相談は不可
7.名義変更(承継手続き)をスムーズに進めるために
栃木県で建設業の名義変更(承継)を進めるなら、最低限次を押さえておくとスムーズです。
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申請は「事前」にしかできない
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事業の全部を承継する必要がある
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必要に応じて廃業届を先に出す
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常勤性の確保のため、承継日より前の社会保険切替は厳禁
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契約書(合併・分割・譲渡)は記載漏れがないように
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後日提出書類の期限は絶対に守る
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承継予定日の2〜3か月前には行政と相談を開始する
これらを押さえるだけで、建設業許可の承継トラブルは大幅に減らせます。
まとめ
建設業の事業承継は、単なる“名義の変更”ではなく、許可要件の確認・承継契約書の整備・事前相談のタイミング など、専門的な要素が多く、慎重に進める必要があります。
特に栃木県では、承継制度の利用条件が明確に定められており、手順を誤ると承継が認められず、無許可期間が発生する可能性もあります。
制度を正確に理解し、早めに準備することが、事業承継をスムーズに進めるための第一歩です。
参考:栃木県建設業許可申請の手引令和7年(2025)年度版













