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コラム
11.212025
戸籍の収集漏れで銀行手続きが止まった実例|相続で最も多い“つまずきポイント”と対処法

戸籍の収集漏れで銀行手続きが止まった実例|相続で最も多い“つまずきポイント”と対処法
相続手続きで金融機関が最も厳しく確認するのは、「相続人が誰かを正しく確定できるか」 という点です。実務では、相続関係説明図そのものより、戸籍の収集漏れ・不整合 が原因で
銀行の解約や預金払戻しが止まってしまうケースが圧倒的に多くあります。
2024年から始まった 戸籍の広域交付制度 により、戸籍収集は便利になりましたが、それでも“漏れや欠落”があると手続きは必ず止まります。この記事では、実際にあった手続き停止の事例と、広域交付制度を含めた正しい戸籍収集のポイントを専門家の視点で詳しく解説します。
目次
【実例】出生から死亡までの戸籍が揃っておらず、銀行で手続きが中断したケース
あるご家庭では、被相続人(亡くなった方)の最新戸籍は取得していましたが、
- 改製原戸籍
- 除籍謄本
- 婚姻前の本籍地の戸籍
が不足していました。
銀行の判断は次のとおりでした。
「出生から死亡までの連続した戸籍が確認できないため、相続人を確定できません」
このため、過去の本籍地を再調査し、追加取得することとなり、手続きが数週間遅延する結果となりました。
銀行が重視するのは“相続人が確定できる戸籍が揃っているか”
金融機関は、「戸籍が連続しているか」 を最も重視します。
次の情報が戸籍で正しく追えなければ、手続きは必ず止まります。
- 被相続人の出生〜死亡までの戸籍
- 父母の生存・死亡
- 兄弟姉妹の死亡の有無
- 甥・姪の代襲相続の有無
- 転籍による本籍地の変遷
つまり、「最新戸籍のみ」では不十分で、“すべての履歴”がつながる戸籍が必要 なのです。
【重要】戸籍の広域交付制度(2024年)でできること・できないこと
2024年3月から始まった「戸籍の広域交付制度」により、相続の戸籍収集は以前より格段に便利になりました。
▼ 広域交付で請求できるもの(全国の市区町村窓口で取得可能)
✔ 現在戸籍(戸籍謄本・抄本)
✔ 除籍謄本・除籍抄本
✔ 改製原戸籍(除籍扱いのもの)
→ とくに過去の本籍地が遠方にあり、郵送を何度も行う必要があったケースでは非常に有効です。
▼ 広域交付で請求できないもの(従来どおり本籍地の役所への請求が必要)
× 戸籍の附票(住所の移動履歴)
× 住民票の除票
× 一部自治体で残る「紙戸籍」※データ化されていないもの
× 明治・大正期まで遡る古い戸籍でデータ化されていないもの
→ そのため、相続人の住所の移動や死亡の確認には「附票・除票」の不足が特によく起こります。
広域交付を使っても“つながらない”ことがある理由
広域交付は便利ですが、以下のような問題が起きると どれだけ請求しても戸籍が繋がらない ことがあります。
✔ 婚姻前の戸籍が別の自治体にあり、広域交付で出てこない
✔ 明治〜昭和期の戸籍が古く、データ未登録
✔ 附票がないため、転籍先が追えない
✔ 兄弟姉妹の死亡情報が戸籍上で確認できない
✔ “除籍扱いされていない改製原戸籍”が広域交付の対象外
こういったケースは、手続きが止まりがちです。
【実例②】兄弟の死亡確認ができず、甥・姪の代襲相続の判定ができず保留になったケース
ある相続では、被相続人に兄弟が3名いました。そのうち1名はすでに死亡していましたが、死亡年月日の記載を確認できる戸籍が不足 していました。
銀行の回答は、
「兄弟の死亡が確認できません。甥・姪が相続人となる可能性があるため、続きの戸籍が必要です」
というもの。
ここから、
- 兄弟の出生〜死亡の戸籍
- 本籍移動の履歴
- 必要に応じて甥・姪の現在戸籍
を追加取得することになり、
3つの金融機関の手続きが1ヶ月以上ストップしました。
よくある戸籍収集の間違い
① 現在戸籍だけ取得して安心してしまう
→ 最新戸籍には「昔の情報」が載っていません。
② 転籍のたびに戸籍を取りこぼす
→ 古い本籍地の除籍謄本は必ず必要。
③ 父母の生存状況を確認していない
→ 兄弟姉妹が相続人になるかどうかに直結。
④ 兄弟姉妹の死亡確認が不足
→ 甥・姪の代襲相続に影響。
⑤ 広域交付で取得した戸籍だけで“全部揃った”と思い込む
→ 広域交付では取得できない戸籍が存在する。
広域交付制度を活かしつつ漏れをなくすためのチェックリスト
□ 出生〜死亡までの戸籍が全て繋がっているか
□ 結婚前後・転籍前後の戸籍も取得できているか
□ 父母の生存・死亡が明確に確認できるか
□ 兄弟姉妹の死亡が戸籍で確認できているか
□ 甥・姪の代襲相続の有無が判断できるか
□ 附票・除票など補助書類も揃っているか
□ 広域交付で出ない戸籍が残っていないか
これらを満たすことで、銀行での手続きが止まるリスクを大幅に減らせます。
まとめ|広域交付は便利だが“全部揃うわけではない”ことが最重要
広域交付制度により戸籍収集は楽になりましたが、以下のような漏れがあると金融機関の手続きは必ず止まります。
- 広域で請求できない戸籍が抜けている
- 兄弟姉妹の死亡確認が不十分
- 転籍の履歴が途中で途切れている
- 附票・除票が不足している
- 婚姻前の戸籍が抜けている
相続で最も時間がかかるのは 戸籍収集 です。ここを正確に行うことで銀行・不動産・保険・名義変更のすべてがスムーズになります。不安がある場合は、専門家に確認を依頼することで手続き遅延や二度手間を防ぐことができます。













