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「工事台帳」の作成義務とは?建設業許可に求められる管理体制

「工事台帳」の作成義務とは?建設業許可に求められる管理体制

「工事台帳(工事簿)」とは、建設業者が受注した工事ごとに、契約内容・原価・工程・出来高などを一元管理する書類のことを言います。建設業法では、建設業者に対し、工事ごとの帳簿作成・保存を義務づけているため、建設業許可を維持する上で欠かせない書類です。この記事では、工事台帳の作成義務と、建設業許可における管理体制の基本をわかりやすく解説します。

工事台帳とは?

工事台帳は、各工事の状況を記録するための基本書類で、次のような情報をまとめるために使用されます。

  • 工事名・工期・発注
  • 請負金額・契約変更内容
  • 直接工事費・共通仮設費・現場経費
  • 材料費・外注費
  • 出来高や工程の記録
  • 工事ごとの利益管理

いわば「工事の通帳」「工事ごとの決算書」のような役割を持ち、元請・下請を問わず、多くの建設業者が日常的に作成する帳簿です。


工事台帳の作成義務 ― 建設業法の規定

建設業法第11条では、建設業者に対し次の義務を定めています。

各工事について、工事に関する事項を記載した帳簿を作成し、保存しなければならない。

この帳簿が一般に「工事台帳」「工事簿」と呼ばれるものです。

● 義務内容のポイント

  • すべての請負工事が対象(元請・下請問わず
  • 契約締結後、速やかに作成すること
  • 完成後も一定期間保存が必要
  • 電子管理(Excel・クラウド)でも可

建設業許可の更新や監督処分の調査では、工事台帳の提出が求められることもあり、適切な作成・保存は許可業者としての基本体制とされています。


工事台帳が求められる理由

工事ごとの利益・原価の把握のため

建設業は工事ごとの採算性が大きく異なるため、工事台帳がないと利益管理ができません。

許可行政庁による確認のため

決算変更届や更新申請では、工事経歴書や財務諸表が必要になります。これらは工事台帳の内容がベースになるため、整備されていないと「数字の裏付けができない」「説明が不十分」と指摘されることがあります。

監督処分リスクの回避

工事台帳を作成していない場合、建設業法違反として行政指導・監督処分の対象になる可能性があります。


工事台帳に記載すべき主な内容

法律で細かな様式は定められていませんが、一般的には次の項目を記録します。

  • 工事名
  • 発注者名
  • 契約締結日・請負金額
  • 工期
  • 契約変更の内容
  • 元請・下請の別
  • 下請代金の支払状況
  • 完成年月日
  • 原価明細(材料費・外注費・労務費など)
  • 出来高・進捗状況
  • 工事利益

特に「下請代金の支払状況」は、建設業法上のトラブルにつながりやすく、確認項目として重視されます。


工事台帳が必要になる主な場面

工事台帳は通常業務の管理書類ですが、次のような場面で「提出を求められる」ことがあります。

● 建設業許可更新

工事実績(工事経歴書)の裏付け資料として利用。

● 決算変更届

完成工事高の内訳確認として必要になる場合あり。

● 行政指導・監督処分調査

下請代金の支払い遅延・無許可営業の疑い等がある場合。

● 融資・金融機関の審査

利益率・現場管理能力の確認として提出を求められることがある。

工事台帳が整っているかどうかで、
企業の管理体制が見られていると言っても過言ではありません。


工事台帳の保存期間

建設業法では「完成の日から5年間」保存することが求められています。(国・地方自治体の公共工事ではさらに長期保存が求められる場合もあります。)


まとめ

工事台帳は、すべての建設業者が作成・保存しなければならない法定帳簿です。

  • 建設業法第11条に基づき作成が義務
  • 元請・下請を問わず全工事が対象
  • 決算変更届・許可更新の裏付け資料となる
  • 行政庁の調査や金融機関審査でも重要
  • 保存期間は完成から5年間

建設業許可を維持し、適正な事業運営を行うためには、日常の現場管理とあわせて工事台帳の整備が欠かせません。


Kanade行政書士事務所では、宇都宮市を中心に、栃木県全域に対応しています。

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