コラム

法的に“安心”を整えるということ~心の豊かさにつながる終活のすすめ~

かつて「終活」といえば、どこか重たくて、避けて通りたい話題でした。でも最近では、「自分らしい人生の終わり方を考えること」は、むしろ「これからの暮らしをよりよく生きるため」のきっかけになる。そう感じる場面が増えています。

行政書士として、日々たくさんのご相談を受けるなかで気付いたことがあります。それは、一見すると法律や手続きの話をしているようでいて、実はその奥に「家族への思い」や「自分自身のこれからに向き合う気持ち」が込められているということ。

たとえば、遺言書を作りたいというご相談。
もちろん、遺産をどう分けるか、誰にどの財産を渡したいかという形式的な内容もあります。
けれど実際に面談をしていると、その根底には「残された家族が困らないように」「感謝の気持ちを伝えたい」といった、あたたかな想いが溢れていることに気付かされます。

あるご相談者は、「これを書いておけば、子どもたちが揉めずにすむでしょう?」と、少し照れたように話してくださいました。実際に作成した遺言書の最後には、奥様への労いと、長年支えてくれた子どもたちへの感謝の言葉を付け加えました。財産の分け方以上に、その「気持ちの言葉」こそが、家族の心に残るのだと思います。

また、最近では「任意後見契約」に関するご相談も増えてきました。
「今は元気だけど、将来のことを考えると、ちょっと不安で…」そんな言葉から始まる相談の多くが、「自分の意思で人生を整えておきたい」という前向きな姿勢に溢れています。

任意後見契約は、もしものときに備えて、信頼できる人に生活や財産の管理をお願いしておく制度です。何も決めていなければ、家族にとってもご本人にとっても、突然の判断が重荷になることもあるでしょう。だからこそ、「自分の未来を、自分で決めておく」という安心感はとても大きいのではないでしょうか?

こうした法的な備えは、決して「終わりの準備」ではありません。むしろ、「これからをどう生きたいか」を考え、自分らしさを大切にしながら暮らすための「安心の土台」だと、私は思っています。

私自身も、行政書士になる前は専業主婦として、家族や日々の暮らしを大切にしてきました。だからこそ、「法律を暮らしのそばにあるやさしいものとして伝えたい」という気持ちを持っています。書類の話ではなく、その人の人生に寄り添う気持ちで丁寧なサポートを心がけています。

「人生の終わりを考える」というと、まだ早いように感じるかもしれません。でも実はそれは、「今をどう生きるか」を見つめ直す、とても豊かで贅沢な時間でもあるのです。法律の世界にも、やさしさや思いやりがあること。
そんなことを、これからもこのコラムを通して、少しずつお伝えしていけたらと思っています。

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