コラム

更新直前に営業所技術者等(専任技術者)が退職…許可は維持できる?

建設業の現場では、「更新の直前に営業所技術者等(専任技術者)が辞めてしまった」「急な退職で許可が維持できるか不安」といった事態が稀に起こります。

営業所技術者等(専任技術者)は許可要件の中心であり、1日でも配置できなくなると“許可要件を欠く状態”に該当する可能性があります。この記事では、営業所技術者等(専任技術者)の退職時に起こり得るリスクと、事業者が直ちに取るべき対応をわかりやすく整理します。


営業所技術者等(専任技術者)が退職するとどうなる?

営業所技術者等(専任技術者)は、建設業許可に必要な “5つの許可要件” のひとつです。
・経営業務管理責任者の設置
・営業所技術者等(専任技術者)の配置
・誠実性
・財産的基礎
・社会保険加入
このうち 営業所技術者等(専任技術者)が欠けると「要件欠如」となり、許可を維持できなくなる可能性 があります。

特に問題となるのが次の2点です。
・欠員期間が発生する
・更新申請に営業所技術者等(専任技術者)を登録できない

更新審査では、「現在、営業所技術者等(専任技術者)が確実に配置されているか」が厳しく確認されます。退職日から後任の資格確認・証明書類が揃うまでの空白期間があると、更新不可となるリスクがあります。


退職日が近い場合のリスクとは

営業所技術者等(専任技術者)が突然辞める場合、次のようなトラブルが起こり得ます。
・更新申請書の提出時に証明書類(資格証・実務経験証明)が揃わない
・後任の技術者が資格要件を満たさない
・実務経験を証明する資料が不足している
・短期間で社内から後任を選べない
・就労形態(兼任・他事業所配置など)が基準を満たさない
更新直前であればあるほど、組織的な準備が追いつかず、許可更新が難しくなるケースがあります。


許可を維持するための“直ちに取るべき行動”

営業所技術者等(専任技術者)が退職することが判明した瞬間に、以下の手続きを開始する必要があります。


① 後任候補の要件確認(資格 or 実務経験10年)

まずは、事業所内に後任候補となる技術者がいるかを確認します。
要件を満たすパターンは次のいずれか。
資格保有者(建築士、施工管理技士など)
実務経験10年以上(契約書・注文書・請求書等で証明)
候補者がいない場合、早急に採用活動を開始する必要があります。


② 実務経験を立証する書類を揃える

後任が「実務経験10年」で申請する場合、許可行政庁が求める書類を満たす必要があります。
一般的に利用する書類
・工事請負契約書
・注文書・請書
・請求書・入金が分かる資料等
・請負金額・工期が分かる資料等
これらが揃わない場合、実務経験として認められず、営業所技術者等(専任技術者)に登録できない可能性があります。


③ 営業所技術者等(専任技術者)の“常勤性”を確保する

営業所技術者等(専任技術者)は、以下の要件を満たす必要があります。
・同一事業所に常勤
・他社との兼務不可
・労働条件通知書・社会保険加入で証明できる
書類が不備だと、更新時に却下される可能性があります。


更新直前に間に合わない場合の扱い

更新提出期限までに後任営業所技術者等(専任技術者)の証明書類が揃わない場合、
・更新申請が受理されない
・結果として 許可失効 となる可能性がある

許可が失効すると
・500万円以上の工事を請け負えない
・元請との契約条件を満たせない
・入札資格が消滅する
など、事業上の損失が非常に大きくなります。


事前の体制整備で防げるトラブル

営業所技術者等(専任技術者)の退職トラブルは、多くの場合「事前準備」で防ぐことができます。
・技術者の複数名体制
・実務経験書類の定期的な保管
・更新前の内部チェック
・技術者の資格取得支援
・技術者台帳の整備
・退職予告があった場合の迅速な引き継ぎ
建設業許可は「人」に紐づく部分が大きいため、組織的なバックアップ体制が不可欠です。


よくある誤解と注意点

❌「更新申請さえ出せば後で追加できる」
不可。 更新は「申請時点で要件が揃っているか」を審査。

❌「退職後、1週間くらい営業所技術者等(専任技術者)がいなくても大丈夫」
空白期間があると不備扱い になる場合あり。

❌「とりあえず名前だけ貸してもらう」
違法であり、監督処分(営業停止・許可取消)の対象。名義貸しは絶対に認められません。


まとめ

営業所技術者等(専任技術者)の退職は、建設業許可の維持に直結する重大な問題です。特に更新直前の場合、準備不足によって許可失効につながるケースもあります。
・後任候補の要件確認
・実務経験証明書類の収集
・常勤性の証明
・空白期間を作らない体制整備
この4点を中心に、早期対応が非常に重要となります。

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