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新設法人で経営業務の管理責任者がいない場合の対応策|許可取得に向けた現実的な選択肢とは

新設法人で経営業務の管理責任者がいない場合の対応策|許可取得に向けた現実的な選択肢とは

建設業許可を新設法人で取得しようとすると、最初につまずきやすいのが 「経営業務の管理責任者(以下:経管)の要件を満たす人材がいない」 という問題です。経管は、建設業許可の中核となる要件であり、原則として“許可取得時点で必ず配置していること”が求められます。

では、新設法人内で経管に該当する人がいない場合、許可取得は完全に不可能なのでしょうか。
実は、制度上いくつかの現実的な選択肢が用意されています。この記事では、その考え方と対応策をわかりやすく整理します。


1. なぜ「経管」が必須なのか?(要件の基本)

建設業法では、許可を受ける会社は「これまで建設業を経営した経験がある人」常勤の役員に置く必要があります。これは、
・経営判断
・受注・契約管理
・施工体制の整備
・クレーム対応
など、建設業を適切に運営するための“実務経験”を求めるものです。したがって、経管不在のまま許可申請を進めることはできません。


2. 経管がいない場合に取れる“4つの現実的な選択肢”

新設法人が許可を取得したい場合、実務的には次の4つの方向性が現実的です。

① 役員に「経管要件を満たす人」を迎え入れる(もっとも一般的)

建設業を5年以上経営した経験、または役員経験・個人事業主経験などを持つ人を「役員」として就任させる方法です。
ポイント
・名義貸しは不可(実態を伴う常勤性が必須)
・親族や退職者の協力で実現するケースも多い
・経管候補者の過去の経験確認(在籍証明など)が必須


② 「経管補佐制度」を活用し、将来的に経管を目指す

2020年の改正により、経管補佐としての経験を積んで経管になる道が用意されました。
● ポイント
・すぐに許可は取れないが、中長期的な人材育成として有効
・経管経験を積むまでの2〜5年を想定
・社内の若手を育てたい会社で選択されることが多い


③ 個人事業の許可を活かして“法人に承継する”

すでに個人事業主として許可を持つ人が法人化する場合、個人の許可実績を法人に承継する制度もあります(要件あり)。
ポイント
・法人化のタイミングによって書類が大きく変わる
・経管が個人事業時代の実績で認められやすい
・個人 → 法人の“一体性”が必要


④ 新設法人での許可取得を将来的に見据え、別ルートで事業を開始する

許可取得が急ぎでなければ、まずは「500万円未満の軽微な建設工事」で実績を作り、将来的に経管候補者を育成していく方法もあります。
● ポイント
・すぐに大きい工事を受けたい場合は不向き
・会社の成長計画に合わせた柔軟な方法
・実務経験の積み上げが将来の許可取得に役立つ
*この場合、候補者を早めに役員へ登用しておくと、後々の要件整理や経験証明がスムーズになります


3. 気をつけたい“よくある誤解”

誤解① 名義貸しを頼めば良い? → 完全に不可

建設業許可は“実態”が重要なため、役員在籍が形式的である場合は即不許可となります。
・常勤性の証明
・給与の支払い
・社内での実務関与
など、実態がないと認められません。


誤解② 外部の経験者に少し名前を貸してもらうだけで良い? → 不可

「外部の元経営者を役員に少し入れて…」も名目上の参加では、当然不許可となります。
・社保加入
・勤務実態
・役員会への参加


誤解③ 一定年数働けば誰でも経管になれる? → 要件は明確に決まっている

経管補佐 → 経管になるには
・実務経験の種類
・在籍会社の業種
・継続年数
の要件があり、誰でもすぐになれるわけではありません。


4. 新設法人が許可取得を目指すなら “最初の計画” が重要

建設業許可は「組織設計」→「人材配置」→「申請」という流れを正しく踏まないと、時間や労力が無駄になりかねません。

特に新設法人は、
① 経管
② 営業所技術者等(専任技術者)
③ 財務基盤(500万円要件)
の3つが同時に揃うポイントがほぼ「許可可否の分岐点」になります。


5. まとめ|経管不在でも“選択肢はある”。事前の計画が成功の鍵

新設法人で経管がいない場合でも、
・経管経験者を迎える
・経管補佐から育てる
・個人許可から承継する
・軽微工事から実績を積む
など、状況に応じた現実的なルートがあります。

大切なのは、許可取得までの時間軸と、人材配置の計画を早めに立てること。記事が、新しく事業を始める方の判断材料になれば幸いです。

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