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相続人が見つからない場合の基本対応と解決ステップ|知っておきたい相続実務のポイント

相続人が見つからない場合の基本対応と解決ステップ|知っておきたい相続実務のポイント

相続手続きでは「相続人の所在がわからない」「連絡が取れない」というケースが珍しくありません。とはいえ、このような場面では、手続きが止まってしまう前に“どのような選択肢があるのか”だけでも知っておくことが大切です。

この記事では、実務上ある「相続人が見つからない場合」の基本的な確認ポイントと、法律上の手続きの流れをわかりやすく整理します。


1. 相続人が見つからないケースで最初に確認したいこと

相続人が所在不明の場合、すぐに特別な手続きをとる前に、以下のような 基本的な確認 を行うことが多くあります。

① 戸籍の調査(出生から死亡まで)

相続人の有無・続柄を確定するため、まずは 戸籍の収集 が基本となります。
・本籍地の変更
・婚姻・離婚
・転籍
・養子縁組
などを経て、戸籍が複数の自治体に分かれていることもあります。

 ② 住所変更の有無

・最新の本籍
・直近の住民票の移動履歴
・戸籍附票
などから、同一人物の可能性を確認します。

 ③ 親族からの情報

「連絡がとれないだけで、実は別の地域で生活している」というケースも少なくありません。あくまで 関係者が把握している範囲の情報 を整理し、過度に踏み込みすぎないことが実務上のポイントです。


2. 確認しても見つからない場合に利用できる“法律上の仕組み”

相続人の所在がわからない状態が続く場合には、民法上、次のような選択肢が用意されています。介入して強制的に捜索するわけではなく、「手続きを前に進めるための仕組み」 として存在する制度です。


① 不在者財産管理人の選任(家庭裁判所)

相続人がどこにいるのかわからず、財産の管理や相続手続きが進められない場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てできます。

● 制度の目的
不在者本人の財産が放置されて損害が出るのを防ぐこと。

● 主な役割
・不在者の財産の保存・管理
・相続手続きのための協議参加(裁判所の許可の範囲内)

● ポイント
不在者財産管理人は“不在者の権利を守る人”であり、他の相続人の代理として遺産分割を進めるものではありません。そのため、遺産分割協議に参加する際は裁判所の許可が必要になります。


② 不在者財産管理人の「権限外行為許可」申立て

遺産分割協議を成立させるためには、不在者財産管理人に「協議への参加」などの権限が必要です。その際に利用するのが 権限外行為許可申立て です。

● 許可される例
・遺産分割協議へ参加
・預貯金の解約
・必要な書類への署名 など
裁判所が個別の事情を見て、必要性を判断します。


③ 失踪宣告(7年失踪または特別失踪)

長期間まったく所在がわからない場合には、失踪宣告 により、法律上「死亡したものとみなす」制度があります。

ただし、
・7年以上音信不通
・天災・事故戦争、船舶の沈没などで生死不明の場合の特例
など、要件は厳格で、相続直近のケースですぐに利用できるものではありません。


3. 実務でよくある「手続きが止まる理由」

相続人が見つからないケースで、実務上もっとも多い原因は以下の3つです。

① 戸籍収集が途中で止まっている
「相続人がいるかわからない」
→ 実は保管されていない戸籍が1通だけ抜けているというケースが非常に多いです。


② 転籍が多く、戸籍附票が途切れている

転籍が多いと“過去の住所履歴が断片的”になることがあります。この場合、検索漏れが生じやすく、所在確認に時間がかかることになります。


③ 海外に居住している(住民票がない)

この場合、
・在外公館
・海外住所での署名証明
などが必要となり、手続きが長期化しやすいのが特徴です。


4. 相続人の所在不明で困らないために知っておきたいこと

● 1人でも連絡が取れない相続人がいると、手続きは基本的に「全員で止まる」
相続手続きは 全相続人の同意が原則 です。

● 無断で手続きを進めることはできない
相続手続きは、意向の確認が必須です。一人の意思を飛ばして進める制度はありません。

● 早めに「情報整理」しておくと手続きがスムーズ
住所・連絡先・家族構成など、把握できる範囲で整理しておくと、いざ手続きが必要になったときに安心です。


5. まとめ|所在不明の相続人がいても、慌てず選択肢を知ることが大切

相続人が見つからないケースでは、不安を強く抱える方も多いですが、法律には 「手続きが前に進むための仕組み」 が整えられています。

大切なのは、
・状況を整理する
・必要な手続きの選択肢を知る
・早めに相談する
という3つです。

この記事が、相続の不安を少しでも軽くし、「どう進めればよいのか」を考えるきっかけになれば幸いです。


Kanade行政書士事務所では、宇都宮市を中心に、栃木県全域に対応しています。

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