コラム

「監督処分制度」とは?建設業者が受ける行政指導の種類と影響

建設業法を理解するうえで避けて通れないのが「監督処分制度」です。この制度は、建設業者が法令違反をした際に行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)が行う行政上の措置であり、建設業の適正な運営と信頼性を守るための仕組みです。

この記事では、監督処分制度の意味・処分の種類・手続きの流れ・実務上の影響をわかりやすく整理します。


1.監督処分制度とは ― 建設業法第28条の規定

監督処分制度とは、建設業法に基づいて行政庁が行う行政処分制度のことです。建設業者が法令違反・不正行為などを行った場合、再発防止や是正のために指導・営業停止・許可取消といった措置が取られます。

【法的根拠】建設業法 第28条
国土交通大臣又は都道府県知事は、建設業者がこの法律若しくはこれに基づく命令に違反したときは、その者に対し、指示、営業の停止又は許可の取消しの処分をすることができる。

監督処分制度は、単なる罰則ではなく、建設業界の健全化を図るための行政上の是正措置と位置づけられています。


2.監督処分の種類 ― 3段階の行政措置

監督処分は違反の内容・程度に応じて、次の3種類に区分されます。

種類 概要 主な対象行為
① 指示処分 軽微な違反に対して改善を求める指導 書類不備・社会保険未加入・軽度な法令違反など
② 営業停止処分 一定期間、建設業の営業を停止 虚偽申請・施工不良・支払遅延など重大な違反
③ 許可取消処分 許可そのものを取り消す最も重い処分 不正取得・再犯・欠格要件該当など

① 指示処分 ― 軽微な違反に対する是正指導

「指示処分」は、監督処分の中でも最も軽い行政措置です。法令違反の程度が軽く、改善が見込まれる場合に行われます。

主な例:

  • 決算変更届・報告書の未提出

  • 社会保険未加入の是正指導

  • 下請代金の支払遅延

  • 安全衛生管理体制の不備

行政庁からの指示に基づき、指定された期間内に改善報告書を提出します。この段階で誠実に対応すれば、事業への影響は比較的軽微です。


② 営業停止処分 ― 営業活動の一時停止

「営業停止処分」は、業務に直接影響を与える行政処分です。処分期間は、通常7日〜30日程度が多く、違反の程度に応じて延長されることもあります。

対象となる行為:

  • 不正・虚偽の申請

  • 契約不履行や施工不良

  • 労働安全基準違反

  • 下請代金の未払い

  • 指示処分に従わなかった場合

営業停止中は新たな請負契約を結ぶことができず、取引先との信頼や入札資格にも影響を及ぼします。


③ 許可取消処分 ― 事業継続にかかわる重大処分

「許可取消処分」は、建設業許可を完全に取り消す最も重い処分です。一度取り消されると、原則として5年間は再申請ができません。

主な対象行為:

  • 虚偽申請による許可取得

  • 重大な安全管理違反

  • 談合・贈賄などの不正行為

  • 欠格要件に該当する事実の発生(暴力団関係者の関与など)

許可の取消は、企業の社会的信用を大きく損なう結果となり、多くの場合、取引先との契約解除や事業停止につながります。


3.監督処分が行われるまでの手続きの流れ

監督処分は、行政庁が一方的に決定するものではなく、一定の手続きを経て慎重に進められます。

【一般的な流れ】

  1. 違反の発覚(報告・苦情・監査など)

  2. 行政庁による調査・確認

  3. 当該業者への通知・弁明の機会(聴聞・弁明書提出)

  4. 審査のうえで処分決定

  5. 処分通知書の交付および公表

「弁明の機会」とは、処分に異議がある場合に意見を述べるための制度です。この段階で誠実に説明・改善を示すことが、処分の軽減につながることもあります。


4.監督処分を受けた場合の影響と注意点

監督処分は行政的な措置にとどまらず、経営・信用・入札資格などに広く影響を及ぼします。

■ 実務上の主な影響

  • 許可更新や業種追加の際に不利になる

  • 官公庁入札の格付け・資格停止

  • 元請・下請契約の解除リスク

  • 栃木県・宇都宮市など自治体のウェブサイトで事業者名が公表される場合がある

特に「営業停止」や「許可取消」の情報は県報やホームページで公表され、地域での信用・再契約にも直接影響します。


5.まとめ ― 法令遵守こそ最大のリスク管理

監督処分制度は、建設業の秩序と安全を守るために設けられた制度です。行政処分を受けないための最も確実な方法は、日常業務で次のような点を常に意識することです。

  • 契約書・見積書・請求書など書類の適正管理

  • 下請代金の支払・法定福利費の遵守

  • 労働安全衛生・社会保険加入の徹底

  • 変更届・決算届など報告義務の期限管理

監督処分は「罰」ではなく、業界全体の信頼性を守るための仕組みです。制度を理解し、誠実な経営を積み重ねることが、結果的に最良のリスク対策となります。


Kanade行政書士事務所では、宇都宮市を中心に、栃木県全域に対応しています。

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