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コラム
11.52025
社会保険未加入対策要綱をやさしく解説|建設業許可で求められる法令遵守とは

建設業許可の審査では、近年、社会保険への加入状況がこれまで以上に重視されています。
その背景にあるのが、国土交通省が定めた社会保険未加入対策要綱です。
かつては「保険に入っていなくても申請はできる」と考えられていた時期もありましたが、今では社会保険の加入確認は許可審査の前提といえるほど重要になっています。
この記事では、社会保険未加入対策要綱の概要と、建設業許可における法令遵守のポイントをわかりやすく整理します。
目次
社会保険未加入対策要綱とは
社会保険未加入対策要綱は、平成29年に国土交通省が策定した方針で、建設業界全体で社会保険の加入を徹底することを目的としています。
主な目的は次の3つです。
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建設業に従事する人が安心して働ける環境を守る
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適正な競争を確保し、未加入業者による不公平を防ぐ
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公共工事や下請構造の健全化を進める
この方針を受け、各都道府県でも社会保険加入状況の確認が、建設業許可審査の中で標準的に行われるようになりました。
許可審査で確認される3つの保険加入状況
建設業許可の申請時には、次の3つの社会保険等の加入状況が確認されます。
| 区分 | 対象 | 確認書類の例 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険 | 法人や従業員を雇用している事業所 | 保険適用事業所番号通知書、資格取得届控など |
| 雇用保険 | 従業員がいる場合 | 雇用保険適用事業所設置届など |
| 労災保険 | すべての事業者が対象 | 保険関係成立届、労災保険番号のわかる書類など |
申請書に添付されたこれらの書類から、適正に加入しているか、また未加入である場合の理由に妥当性があるかを確認します。
未加入のままだとどうなる?
社会保険に加入していない場合、審査の中で次のような対応が取られることがあります。
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許可申請が保留または不許可となる
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加入指導を受け、一定期間内に改善報告を求められる
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更新時に改善が見られない場合、許可の維持が難しくなる
特に営業所技術者等(専任技術者)や常勤役員が社会保険に加入していない場合は、常勤性の要件そのものを満たさないと判断されることもあります。
法令遵守体制を整える3つのポイント
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加入義務の有無を正確に確認する
個人事業主か法人か、また従業員数によって義務の範囲が異なります。 -
加入後の書類を適切に保管する
保険関係書類は、許可更新や経営事項審査でも再利用できます。 -
下請・協力会社にも意識を共有する
元請として、取引先の加入状況を確認し、健全な取引体制を維持することが求められます。
社会保険の整備は、単なる形式ではなく、企業の信頼性を示す基盤でもあります。
まとめ ― 「加入して終わり」ではなく「続けて守る体制」へ
社会保険未加入対策要綱は、建設業界全体の健全化と、働く人を守るための取り組みです。
建設業許可の審査では、加入そのものだけでなく、法令遵守を続ける姿勢も問われます。
制度対応は時に負担に感じるかもしれませんが、それは同時に、会社の信頼を見える形で示すチャンスでもあります。
小さな整備の積み重ねが、持続可能な経営への一歩となります。
【補足メモ】
この内容は2025年11月時点の国土交通省「社会保険未加入対策要綱」および栃木県の審査実務に基づいています。
2026年度にかけては、電子申請や建設キャリアアップシステム(CCUS)との連携も進む見込みです。











