コラム

相続人代表者が決まらないときは?対応の進め方と知っておきたい注意点

相続手続きでは、まず「相続人代表者」を一人決めるのが一般的です。
金融機関や役所への届出など、複数人で行うには手続きが煩雑になるため、一人が「窓口」としてまとめる役割を担います。

しかし実際には、「誰が代表をやるのか話がまとまらない」「家族の間で意見が合わない」といったご相談も少なくありません。

この記事では、相続人代表者が決まらないときにどう対応すればよいのか、家庭内でできる整理や話し合いの進め方を、わかりやすくお伝えします。


相続人代表者とは?役割と位置づけ

まず理解しておきたいのは、「相続人代表者=すべてを決定できる人」ではないということです。

相続人代表者はあくまでも、手続き上の「連絡・申請の窓口」となる人を指します。

代表者が決まっても、財産の分け方(遺産分割)などの権利関係を単独で決める権限はありません。

主な役割としては次のとおりです。

  • 金融機関や役所などへの届出・問い合わせ窓口

  • 相続関係書類(戸籍・印鑑証明など)の取りまとめ

  • 手続き進行に関する情報共有の中心的役割

つまり、代表者は「家族の代弁者」であり、「まとめ役」という位置づけになります。


相続人代表者が決まらない理由と背景

代表者が決まらない場合、その背景には次のような要因がよく見られます。

(1)責任の重さを避けたい

「失敗したら責められそう」「面倒な役が回ってくるのでは」と感じる方も多く、誰も引き受けたがらないケースです。

(2)兄弟姉妹間の立場の違い

遠方に住む人・同居していた人・介護を担っていた人など、立場が違うことで「自分が代表になるのは不公平」と感じる場合もあります。

(3)信頼関係のすれ違い

「誰が中心になるか」で揉めるというよりも、これまでの家族関係の積み重ねが影響することも少なくありません。


話し合いを進めるための3つのステップ

代表者を決めることは、最終目的ではなく、相続を円滑に進めるための「最初の一歩」です。焦らず、次のステップを意識して整理してみましょう。

ステップ1:役割の意味を共有する

「代表者がすべて決める人ではない」という前提を家族全員で共有します。
代表者が“代理決定者”ではなく、“連絡調整役”であることを理解するだけで、心理的な抵抗が和らぐケースもあります。

ステップ2:得意分野を生かして分担する

手続きを一人に集中させず、「戸籍を集める人」「銀行の問い合わせをする人」など、分担して進めても構いません。
結果的に中心となる人が“代表者”として自然に決まる場合もあります。

ステップ3:書面で共有しておく

話し合いで決まったことは、メモやLINEなどでも構いませんので記録しておきましょう。
「誰が何を担当するか」を明確にしておくことで、誤解やトラブルを防ぐことができます。


それでも決まらない場合の考え方

家庭内の話し合いで折り合いがつかない場合は、「とりあえずの代表」を決めて進める方法もあります。

例えば、

  • 戸籍収集や金融機関への連絡はAさん

  • 書類署名や印鑑のとりまとめはBさん
    といったように、部分的な代表制にして進行することも可能です。

また、相続人全員の同意が必要な局面(遺産分割協議や登記など)に入る前に、専門家に相談して整理の方向性を確認しておくのも安心です。


まとめ ― 話し合いのきっかけを整えることから

相続の代表者を決めることは、単なる手続き上の形式ではありません。
家族がこれからどう関わっていくかを話し合う、大切な機会でもあります。

「誰が一番正しいか」ではなく、「どうすればみんなが納得して進められるか」という視点を持つことが、円滑な相続手続きにつながります。

話し合いが進まないときこそ、少し距離をおいて整理する時間が役立ちます。
視点を変えることで、思いがけない解決の糸口が見つかることもあります。

また、ときには専門家に相談して、書類の整理や手続きの流れを一緒に確認してみるのも一つの方法です。
第三者の客観的な視点が入ることで、家族全体の気持ちや状況を整理しやすくなる場合もあります。

手続きを進めることも、気持ちを整えることも、どちらも大切な相続の一部です。
それぞれのペースで、無理のない形を見つけていきましょう。


Kanade行政書士事務所では、宇都宮市を中心に、栃木県全域に対応しています。

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