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コラム
11.102025
2026年に向けた建設業許可制度の行方|行政書士が見据える次の改正と業界の未来

2025年の制度改正を経て、建設業界は今、大きな転換期を迎えています。
「許可を取る」ことがゴールではなく、制度をどう活かしていくかが問われる時代に入りました。
では、この先の2026年以降、どんな変化が予想されるのでしょうか。
ここでは、現行の法改正の延長線上に見えている「次の一歩」を、行政書士の立場からやさしく整理します。
現場で働く方、経営を担う方、それぞれにとっての“準備のヒント”としてご活用ください。
目次
「持続可能な建設業」へ—制度の方向性が示すもの
これまでの建設業法改正は、「人を守る・会社を育てる」制度づくりが中心でした。
2026年にかけても、この流れはより具体的な形になっていくと見られます。
特に注目したいのは、次の3つのキーワードです。
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生産性の向上(DX・省人化)
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人材確保と教育(リスキリング・多様な働き方)
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公正な契約と価格転嫁の仕組み化
これらは「建設業許可」そのものの審査や更新にも、今後徐々に影響していく可能性があります。
予測①:電子申請の完全義務化とデータ連携の拡大
2025年から段階的に進められている建設業許可の電子申請。
2026年度中には、全国的な完全義務化へ向けた整備が本格化すると見られます。
何が変わる?
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許可申請・更新・変更届などの紙提出が原則廃止へ。
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各都道府県システムが国交省とデータ連携し、情報が一元化。
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技術者情報や経営事項審査(経審)との連携も進行。
準備しておきたいこと
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社内の書類フォーマットを電子対応に整える。
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データ保存・電子署名の運用ルールを確立。
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申請を代行する専門家との連携体制を明確にする。
→ 2026年の行政手続きは、「紙からデータへ」完全に舵を切る年になるでしょう。
予測②:人材・技能の評価制度が“許可の基準”に近づく
「技能者をどう育て、どう評価しているか」が、許可業者の“信頼度”を左右する時代になりつつあります。
想定される動き
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建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録状況が、許可更新時の参考資料になる可能性。
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研修受講や技能検定の実績を、許可審査で「加点評価」する検討が進む。
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若手・女性・外国人技能者の活用を支援する**「多様性評価」**も導入の兆し。
対応のポイント
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社員一人ひとりの資格・技能を“見える化”して管理。
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技能継承・教育体制を整え、企業内で成長できる仕組みをつくる。
→「人を育てる企業」が、制度的にも評価される時代へ。
予測③:経営事項審査(経審)の簡素化と評価の多様化
経審制度も、2026年にかけて大きな見直しが予定されています。
現在、国交省では「より簡単に・正確に企業を評価できる制度」への転換を検討中です。
想定される方向性
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書類負担の軽減(電子提出・自動計算化)
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経営力・技術力だけでなく、法令遵守・働き方・社会的責任の評価を導入
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公共工事以外でも、経審点数が“信頼の指標”として活用される動き
企業にとってのメリット
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審査準備の効率化により、中小企業でも挑戦しやすくなる
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「数字では測れない努力」が評価される方向へ
予測④:地域連携・共同受注の促進
人手不足と高齢化が進む中で、企業同士が協力して受注する仕組みが広がると考えられます。
すでに国や自治体では、共同企業体(JV)や協同組合を通じた中小企業連携を後押ししています。
今後注目されるポイント
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許可業者間の「共同受注ガイドライン」の整備
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中小事業者同士の連携支援補助金の拡大
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行政書士が“連携協定書”などの作成支援を担うケースの増加
→ 一社で抱え込む時代から、チームで受注する時代へ。
予測⑤:許可制度とESG経営の融合
環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)を意識した経営、いわゆるESG経営の考え方が、建設業界にも広がっています。
2026年以降は、
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環境配慮型施工
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労務環境の整備
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法令遵守・内部統制
といった要素が、企業評価や許可更新に間接的に影響していく可能性があります。
→「社会に信頼される会社づくり」が、制度面でも評価対象になっていくでしょう。
行政書士として感じる2026年の展望
制度が変わると、手続きも確かに複雑になります。
けれど、改正の本質は「現場を守るため」「未来をつなぐため」にあります。
書類や数値の向こうにいる“人”を見つめながら、企業のこれからを一緒に整えていくこと。
それが、これからの行政書士に求められる役割だと感じています。
まとめ
2026年は、建設業界にとって「変化を形にする年」になりそうです。
許可制度が守ってきた信頼の仕組みを、次の時代にどうつないでいくか。
その視点が、これからの経営に欠かせないキーワードになるでしょう。
制度を“ただ追う”のではなく、制度と共に成長する会社へ。
その第一歩として、今できる準備から始めてみませんか。
🔗 前回の記事はこちら:
2025年建設業法改正の最新動向|12月施行に向けた改正ポイントと実務準備












