コラム
5.162025
相続と遺贈の違いとは?遺言書で想いを託すときに知っておきたい基礎知識

目次
相続と遺贈の違いとは?遺言書で想いを託すときに知っておきたい基礎知識
「相続と遺贈ってどう違うんですか?」
遺言書の相談を受けると、ほとんどの方がこの疑問を持たれます。
どちらも「財産を次の世代に渡す」という行為ですが、法律上は大きな違いがあります。
この違いを正しく理解しないと、遺言書を作成したのに思った通りに財産を渡せなかったり、無用なトラブルを招く可能性もあります。
この記事では、相続と遺贈の違いをわかりやすく整理し、遺言書で正しく想いを託すために必要な知識を行政書士の視点から解説します。
相続と遺贈は何が違う?
まず最も大きなポイントは、「誰に財産を渡すか」で言葉が異なることです。
相続とは?
相続とは、法律で定められた「法定相続人」が亡くなった方(被相続人)の財産を引き継ぐことを指します。
遺言書がない場合、民法で決められた割合で自動的に分割されます。
例:
配偶者と子ども2人の場合、配偶者1/2、子どもが1/4ずつ相続する。
遺言書で分配を変えることも可能ですが、原則として相続人に権利が発生します。
遺贈とは?
遺贈とは、遺言書で指定した相手に財産を渡すことです。
法定相続人ではない人にも渡せます。
例:
「長年支えてくれた友人〇〇に500万円を遺贈する」
「公益法人△△に財産の一部を寄付する」
つまり、遺贈は遺言書がなければ成立しません。
相続と遺贈の共通点と相違点を整理
項目 | 相続 | 遺贈 |
---|---|---|
対象 | 法定相続人 | 相続人・第三者(友人や団体など) |
必要書類 | 戸籍・遺産分割協議書など | 遺言書(遺贈の記載必須) |
手続き | 法定相続または遺言に従う | 遺言に従うのみ |
税負担 | 相続税 | 相続税(ただし基礎控除が異なる場合あり) |
特に「相続人に渡すか、相続人以外に渡すか」で言葉が変わる点が重要です。
遺言書で相続と遺贈を正しく使うポイント
遺言書を作成する際、以下の点に注意するとトラブルを防げます。
1. 誰に渡すのかを明確にする
相続人には「相続させる」、第三者には「遺贈する」と記載します。
例:
「妻〇〇に全財産を相続させる。」
「友人〇〇に300万円を遺贈する。」
この表現が逆だと、法的効力が弱まる可能性があります。
2. 特定遺贈と包括遺贈の違いを知る
特定遺贈
→ 特定の財産を渡す(例:「A土地を遺贈する」)
包括遺贈
→ 財産の一定割合を渡す(例:「全財産の1/3を遺贈する」)
包括遺贈は相続人とほぼ同じ権利義務が生じ、負債も承継するため注意が必要です。
3. 遺留分を意識する
たとえ遺贈の意思が強くても、配偶者や子には遺留分(最低限の取り分)があります。
これを侵害するとトラブルになるため、事前に配分を検討しましょう。
実例から学ぶ遺言書の失敗例
事例① 曖昧な表現で遺贈が無効に
「〇〇に全財産を譲る」とだけ書いた遺言書。
相続人と第三者が混在し、法的解釈が分かれて紛争になりました。
事例② 遺留分を考慮せず全財産を第三者に遺贈
全財産を遺贈すると書いたことで、子どもから遺留分侵害請求を受ける事態に。
こうした例は珍しくありません。
Q&A|よくある質問
Q. 第三者への遺贈は税金が高くなる?
A. はい、基礎控除が小さく、相続税率も高めになります。専門家による試算がおすすめです。
Q. 遺贈でも分割協議が必要?
A. 特定遺贈であれば不要です。包括遺贈の場合は分割協議が必要になります。
Q. 相続人への遺贈はできますか?
A. 可能ですが、通常「相続させる」と書く方が法的に明確です。
公正証書遺言でリスクを減らす
自筆証書遺言は表現や形式の不備が多いものです。
公正証書遺言なら、以下の安心があります。
-
法的な不備を防止
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公証役場で保管
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まとめ|正しい言葉で想いを伝える遺言書
遺言書は単なる手続きではなく、大切な人へ想いをつなぐ手段です。
「相続」と「遺贈」の違いを理解し、誰にどのように財産を残したいかを具体的に整理することで、安心を遺せます。
迷ったときは専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
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