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コラム
10.292025
「包括遺贈」とは?特定遺贈との違いと法的意味を整理

「包括遺贈」とは?特定遺贈との違いと法的意味を整理
目次
遺言書の中でよく出てくる「包括遺贈」とは
遺言書を作成するときに、「財産を誰に遺すか」という表現の中で「包括遺贈(ほうかついぞう)」という言葉が使われることがあります。
一見難しそうに聞こえますが、意味はシンプルです。
包括遺贈とは、財産の全部または一定の割合をまとめて遺すという方法のことです。
たとえば、次のような書き方が該当します。
「私の財産のすべてを妻〇〇に遺贈する」
「私の財産の3分の1を長男〇〇に遺贈する」
このように、「どの財産」という指定をせずに全体または割合で遺す形が「包括遺贈」です。
包括的に受け取る人を「包括受遺者」と呼びます。
特定遺贈との違いをわかりやすく整理
一方、「特定遺贈(とくていいぞう)」とは、特定の財産を指定して遺す方法です。
「宇都宮市の自宅土地を長女〇〇に遺贈する」
「足利銀行の預金〇〇円を次男〇〇に遺贈する」
このように、財産を特定して贈るのが特定遺贈です。
違いをまとめると次のようになります。
| 区分 | 包括遺贈 | 特定遺贈 |
|---|---|---|
| 内容 | 財産の全部または割合で遺す | 財産を個別に指定して遺す |
| 例 | 「全財産を妻に遺す」 | 「自宅を長男に遺す」 |
| 法的立場 | 相続人に近い地位を持つ | 相続人とは独立した立場 |
| 債務(借金) | 承継する | 承継しない |
| 登記・名義変更 | 相続登記と同様に可能 | 個別の登記・移転が必要 |
包括遺贈は、財産のすべてを引き継ぐイメージのため、遺言で指定された相続人に近い扱いを受けます。
一方、特定遺贈は「ある財産を譲る」行為に近く、他の相続人の承諾や登記手続きが必要なケースもあります。
包括遺贈の特徴と注意点
包括遺贈には、次のような特徴があります。
1. 相続人と同じように債務も引き継ぐ
遺言で「全財産を妻に遺贈する」とした場合、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借入金などのマイナスの財産も一緒に引き継ぐことになります。
特定遺贈では債務は引き継がれませんが、包括遺贈では「全体を承継する」ため注意が必要です。
2. 相続登記などの手続きが簡略化できる
包括受遺者は相続人に準じた立場となるため、不動産登記の際も「遺贈による所有権移転登記」ではなく、「相続登記」として手続きを進められる場合があります。
そのため、相続手続き全体をスムーズに進めやすいというメリットもあります。
3. 他の相続人がいる場合は慎重な記載を
たとえば「全財産の3分の1を長男に包括遺贈する」とした場合、残りの3分の2は法定相続人に分配されることになります。
遺言書の内容によっては、法定相続分と重なったり、遺留分(最低限の取り分)との関係が複雑になることもあるため、配分を明確にしておくことが大切です。
どんなときに包括遺贈を選ぶとよいか
包括遺贈は、次のようなケースで有効に使えます。
-
相続人のうち、特定の人にすべての財産を託したい
-
財産の種類が多く、ひとつずつ指定するのが難しい
-
配偶者に一任したい場合
遺言書を作成するときに「全体を託す」という意思を明確にしたいときに適しています。
ただし、債務も含まれる点は事前に確認しておく必要があります。
まとめ:包括遺贈は「すべてを託す」意思表示
包括遺贈は、遺言者の「全体を託す」という意思を反映できる一方で、相続人の立場や債務の扱いなど、法的な意味も大きい制度です。
遺言書を作成するときは、どの範囲を包括遺贈にするのか、特定遺贈との組み合わせをどうするのかを整理しながら、自分の想いが正確に伝わる内容にすることが大切です。
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